アナログ24時

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長野県北信の須坂市にイオンモール出店のニュース

 いわゆる就職が理由で長野市に住むことになってしまった私。

あれからかれこれ15年、転勤などはあったものの再び長野市へ戻ってきました。

その前まで住んでいたところは大都市圏、しかも海外でしたから、戻ってきての第一声は「空気がきれいだなぁ」というものでした。

ところが、次第に生活に慣れてくると次に感じたのが「相変わらず長野って買い物するところがないんだよね・・・」というなんとも日常生活の物足りなさを実感してきました。

 四方を山に囲まれた閉鎖商圏でもある長野の北信地域、しかし近年は交通網の発達とともにその地域一帯の商圏は60万人規模もあるみたいですが、核となるショッピングセンターが一つもないことに県外から来た私にとっては違和感を感じていたのです。

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イオンモール建設予定地である高速須坂インター付近

 

須坂市に大型ショッピングモール建設の報

 そんななか、つい最近になって知ったビッグニュース(私にとってですが)がありました。

 それは、須坂市井上に開発業者が建設を検討する大規模ショッピングセンター(SC)、つまり「イオンモール」の出店のニュースです。

 概要は、長野自動車道須坂長野東インターチェンジ(IC)入り口北側に広がる農業用地で、人通りも少ないこの地に2014年、三重県四日市市の開発業者「長工」が約14万3000平方メートルに及ぶ県内最大規模の商業施設「イオンモール」を建設する計画を市に提案したのです。同社は北信地域に限らず、新潟県上越市など広範囲からの集客が期待できる立地と見込んでいるというものでした。問題は、開発には市が農地指定の解除を国に要望することが必要で、市が建設の可否について検討してきました。

 須坂市長野市に隣接する人口5万人余りの小さな市です。市街地は戦後、富士通関連の工場地帯として発展しました。市内にはいくつか工業団地もでき、1960〜70年代に商店街は最も栄えたということです。しかし、80年代以降は工場の縮小、撤退が相次ぎ、地元の飲食店や日用品店も次々と閉店に追い込まれた現実に直面しています。

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須坂にこんなショッピングモールが誕生するのか!?

 交通においては近年、長野電鉄が運営する鉄道、須坂ー松代ー屋代線廃線となっており、現在は長野線のみがなんとか存続されいるという状況です。本来望む形であろう駅を中心とした街づくりはどこへやら、駅前は閑散としており、何十年前に建てられた古めかしいイオンショッピングセンターがあるくらいです。

 私も何度か足を運んだもののここで買い物をしようという雰囲気はまったくありませんでした。唯一県立の病院があるくらいで、古いマンションがいくつかあるくらいで過疎化しつつある町の印象は否めませんでした。

 夏には毎年地域の商工会主催での須坂祭りが開催されていますが、そこで行われる花火大会に行ってみたものの、「2000発の大花火大会」といううたい文句はあるものの、実際は200発にしかみえない非常にしょぼいものでした。

 

大型商業施設計画は実は2004年からあった事実

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オリンピックスタジアムとサッカー場の図。本当はここに隣接してイオンモールが出店予定だったが・・・

 今回の須坂市への大型店出店計画であわてているのはお隣長野市。実は過去には長野市へ全国的にも最大規模のイオンモールを出店(敷地面積19ヘクタール)しようと試みたことがあったのです。2004年に長野市篠ノ井東福寺で開発計画が持ち上がった案件です。ここは隣接して、長野オリンピックで開会式が開かれ、今は野球場となっている「長野オリンピックスタジアム」やサッカーJ3・ACパルセイロのホームスタジアムがあります。本来ならばこの土地にイオンモールができていたはずで、それが実現していたならば、スポーツと融合した新しい街が形成されていたことでしょう。

 ところが、長野商店会連合会など地元商工関係者が反対運動を展開したのです。そして、市は「農地の転用が困難」との理由で開発を事実上拒否してしまいました。当時わたしは小売業界におりましたが、実際にイオン側からも出店の打診が来ていたという噂をききました。それくらい現実味を帯びた話であり未だに腑に落ちない部分があるくらい突然その話が断ち切れた感がありました。

 あれから10年余りたちますが、今計画があった付近はどうなっているかというと、専門店が10店舗あまり出店しており、非常に中途半端な状況になっています。「農地の転用が困難」と言う理由で開発がなされなかったはずですが、なぜ今店が建ってしまっているのか、具体的に理由の説明がないままなんとも納得がいかないのです。

 考えてみたところ、当時の市と工事を受け持つ受注業者など、関連したところの利害関係が大きく関与していたのではないかと言う部分を疑わざるを得ません。大手のイオンモールとなるとおそらくイオンと関係の強い業者がそういった部分を受け持つことが考えられ、地場業者にとっては面白くない話ではないかと思います。そういう話が一部の人たちだけの間で行われ、実際の利用者にとっての意見と言うものがまるで反映されていないのが今の長野市の姿になってしまったのではないでしょうか。

大型商業施設建設「賛成」は約75%の現実

 須坂市によると、地元の消費者や商店主から意見を聞く場として3回にわたり開いた協議会で、建設による「反対意見はほとんど聞かれなかった」と説明しています。また、市が開発についてインターネットで募った県内外の意見についてまとめたところ、「賛成」が約75%を占め、「反対」の約7%を大幅に上回ったということです。

 ここからわかるように、現実的に建設を望んでいる声は多いわけで、民主主義国家である我が国の原理原則にのっとってみるとよっぽど特異な事情がある限り否定する事は出来ないはずなのです。

 確かに商店会側の意見とすると出店後、自分たちの死活問題に発展するため非常に悩むのは確かな話です。しかし、高齢化、過疎化で弱体化する町の現状からは、方向転換を余技されないという現実に直面しているはずです。

 12年の県の調査では、住民が地元で買い物をする割合を示す地元滞留率は須坂市48・9%で、県内1位の長野市(93・6%)の半分程度、隣接の中野市(76・2%)の6割というデータがでてきています。市外在住者も含めた買い物客の多さを示す吸引力係数は須坂市59・7%で、中野市(146・2%)の4割程度とのことです。しかし、実際はそれ以上に他へ流れている可能性があると考えます。

 

長野市中心部の現実と近隣地域の現状

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在りし日のそごう やはり街が古い感じ 

出典:http://tamagazou.machinami.net/naganoshigaichi.htm

 ここ10年ほどで長野市の駅周辺の市街地の様子は一変しています。

 数少ない百貨店の一つであった「そごう」は2000年(平成12年)7月に閉店、近隣の「ダイエー」は同12月に閉店、郊外へ移転しています。これにより長野市の中心部は「東急百貨店」のみが残っている状態となっていますが、売り場は決して魅力のあるものではありません。買い物するところがなく、仕方なくそこで購入していると言わざるを得ない状況です。

 「そごう」跡地にはSBC信越放送が核となる商業施設へ、「ダイエー」は市が核となり「もんぜんぷらざ」として各企業を誘致して再利用しています。しかし、施設は非常に古めかしく、駐車場代を払ってわざわざ行きたいという人は少ないのではないでしょうか。

 歴史を見ていくとこの辺りの集客全盛期は1950年代後半~バブルがはじける1990年ごろ(昭和30年代~平成初期)であることが分かりました。この流れから見て分かるように、それまでの市街地で消費するスタイルから、自動車重視の郊外で消費する傾向にあるという現実があります。

 昨年、長野市善光寺御開帳、北陸新幹線開業ということもあり、駅前の駅ビルを一新しました。専門店がいろいろ入るということでちょっと期待して足を運びましたが、あくまで観光客向けの施設、地元住民が日常的に利用するには程遠いと実感しました。

 このように、既に市の中心部はかつての活気はなくなっており、一見にぎわっているようには見えますが、それは観光客による効果が大きいのです。中心部の空洞化は年々進んでいるわけで、かつての消費は今どこへ行ってしまったのか、市はもっとここに着目すべきなのではないでしょうか。

 近隣の街へ目を向けてみると、上田市には大型の商業施設が2軒あります。「イオンショッピングセンター」とセブンホールディングスの「アリオ」です。「アリオ」はそれまで上田駅前にあったイトーヨーカドーが実質的に移転した形ですが、結果は連日満車になるほどの大盛況です。時代は圧倒的に郊外型ショッピングモールへと移ってきたことを象徴づけています。普段あまりであるかない私が行くぐらいですから、長野市地域からの集客もかなりあるのではないでしょうか。

 

近隣の大型店規模は・・・

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アリオ上田店 出典:http://assets.rimg.jp

 長野市付近にある大型商業施設の代表は上田の「イオンショッピングセンター」(延床面積約60000平方メートル)、「アリオ」(延床面積約47300平方メートル)、松本には2017年度中オープンを目指す「イオンモール」(敷地面積約62500平方メートル)、一方で長野市の核となるショッピングセンターは「とうきゅう百貨店」(延床面積約20000平方メートル)です。

 郊外のほうは土地が存分にあるのに対して、市街地は限られた土地で商売をやるしかない、自動車優位の地方都市にとってはやはり郊外型の商業施設のほうが有利なのではないでしょうか。

 

大型商業施設との融合

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大分市のパークプレイス

 こういう地域だからこそ、もう少し外に目を向けてみることが大事であると思います。遠くは九州まで離れますが、ここには大型商業施設とスポーツとが一体化した地方の成功例がみえるのです。

 大分県大分市にある「パークプレイス大分」。ここは2002年(平成14年)に開業した敷地面積約180000平方メートルもある複合商業施設です。

近隣にはJリーグ大分トリニータ」のホームグランドがあり、160店舗余りの専門店が入るイオンが核となってできた超大型のショッピングモールなのです。

 この近くにはさらにはパークプレイス大分公園通りと呼ばれる住宅地もあり、新しい街を形成しているのです。

 ここがある場所は大分の市街地からは遠く離れた高速道路のインターチェンジがある郊外。しかし立派な商業を展開しており、県内各地からの集客で連日にぎわっています。

 商圏としては長野北信地域と大きな差はありません。しかしながら、もう少し市街地には地元百貨店が核となる「トキワわさだタウン」(売り場面積約10万平方メートル)があります。更に大分駅前は最近再開発され、在来線しかないですが、長野駅に引けを取らない大きな駅ビルができたのです。

 結果、街の魅力が一層増し、地域経済に貢献しているだけでなく、「住みたい」という意見が増えた結果、ここ10年人口は増え続けているのです。まさに官民一体となって街を開発していった結果と言えるのではないでしょうか。

 

最後に・・・

 街づくりの仕方自体が変わってしまうぐらい影響がでるため、賛否両論が出る大型商業施設の建設。しかし、新しい社会、街づくりを考えるうえで民主主義である以上、一部の関係者の考えにとらわれない先進的な意見が言えることが大事であると思います。また、新しく来たものをよそ者扱いするのではなく、いかに協調して、これまで以上の成果へと結び付けていくか、閉鎖的な土地柄であるからこそ期待したいのはそういうところです。長野には観光資源が豊富で、首都圏からも比較的近い立地にとても恵まれた土地です。是非、より住みやすく人が集まりやすい地方都市へと発展していってほしいものです。